我々が当たり前のように使っている「株主」という言葉ですが、株主には一体どのような権利が与えられるのでしょうか。
株主優待や配当は有名な制度ですが、それ以外に株主が持つことのできる権利、そして会社との運命共同体として背負うことになる責任についても言及します。
株主に与えられる権利をしっかりと理解して、株を購入した後に損をすることがないように備えておきましょう。
この記事の目次
株主の種類
報道などでも頻繁に聞くことが多い「大株主」という言葉ですが、実は大株主として扱われるための明確な基準が設けられているわけではありません。
一般的には数十万株といった単位の株式を保有していたり、大量保有報告書に名前が記載されていたりする株主が大株主と呼ばれています。
次に「筆頭株主」は、持ち株比率がもっとも高い株主を指す言葉であり、会社に対してもっとも強い影響力を持っている人物です。
一般の株主に向けて使われることが多いのが「安定株主」と「不動株主」で、前者は長期的に株を保有する人物、後者は短期間で売買を行う人物を指しています。
最後に「外国人株主」は、日本国外に住んでいる外国人の株主を指す際に使われる言葉です。
つまり、日本国内で暮らしている外国人投資家のことを、外国人株主と呼ぶことは一般的ではありません。
株主になると得られる三大権利
株主になると得られる権利は主に三つで、一つ目が配当金、二つ目が株主優待、そして三つ目が議決権です。
配当金は、持ち株数に応じて会社から配当金を受け取れる制度であり、会社によって配当利回りが変わるほか、無配と呼ばれる配当金なしの会社も存在します。
配当は会社が出した利益を株主に還元するという方針に則って用意されるものであるため、成長する会社を見越して投資すると得ができるというのが株式投資の原則です。
株主優待は会社から商品を受け取れるという制度であり、自社製品をはじめ、金券や食事券などを受け取ることが可能です。
株主優待は持ち株数に応じて内容が変わることが多いほか、数年以上の継続保有や、1,000株以上の保有などが株主優待を受け取るための条件になることがあります。
そして、議決権は株主総会に参加して、株主としての意見を述べたり、決議に参加して投票したりできる権利です。
役員の選定や解任といった重要な局面では、必ず株主総会による決議が行われますので、株主になると、その会社のいわば選挙権を得ることができるのです。
自益権と共益権
三大権利のほかに、自益権と共益権という二つの権利を株主は得ることができます。
自益権は、会社が解散する局面において効果を発揮することになり、解散時に会社に残っている財産の分配を受けられるという権利です。
この権利を生かすことによって、株が価値を失ったとしても資産がゼロになることはなく、会社から一定のお金が払い戻されます。
次に共益権は、株主が会社の経営に参加する権利のことを指しており、三大権利として記した議決権の獲得も共益権の一部として考えることができます。
重大な議案は株主の過半数の同意を得られなければ通過しないため、株主一人ひとりが持つ権利はとても重いのです。
ただし、共益権は単独株主権と少数株主権に分かれており、単独株主権を採用する会社の場合には、100株のみの保有でも共益権を行使できます。
一方の少数株主権を採用している会社の場合には、一定数以上の株を保有していなければ議決権などが与えられません。
経営陣に対して株主が問える責任
会社の取締役が違法行為を犯すことによって会社が損害を被ったときには、会社に代わって株主が賠償責任を問うことができます。
これは「株主代表訴訟」と呼ばれる権利であり、株主には会社の運営状況を確認して、責任追及する権利が与えられるのです。
この権利があることによって、組織内でのもみ消しや癒着といった行為を防止し、会社の経営状況における健全性を維持できます。
次に、取締役が何らかの事由によって責任を問われるというシチュエーションにある場合には、株主が「解任請求」を行うことが可能です。
6ヶ月前から継続して株式を保有し、なおかつ総株主が持つ議決権の100分の3以上の議決権を持つことなどが条件ですが、裁判所を通じて解任請求できます。
さらに、会社の損害が起こる前に取締役の違法行為が発覚した場合には、それを止めさせるための「差止請求」を行うことも、6ヶ月以上の継続保有者には許されています。
株主が背負うことになる責任
株主は会社にとって運命共同体のようなものであり、株主は株を保有することでさまざまな権利を手にできる代わりに、相応の責任も背負うことになります。
たとえば、会社が倒産した場合、残っている財産の分配を受け取ることはできますが、株そのものの売買で発生した損失を取り戻すことはできません。
株主総会などの場で意思を示し、発言する権利が与えられることはあったとしても、株を保有するという責任は自分自身で追わなければならないのが株式投資のルールです。
仮に会社の赤字が続き、株価が下がり続け、配当金や株主優待が出なくなったとしても、それに対して株主が文句を言ったり、抗議したりはできません。
もしも将来的に会社が倒産し、100%減資が行われてしまったとしたら、株主はそれを受け入れて、株主としての責任を取らなければならないのです。
株主になるための方法
株主になるための方法はとても簡単で、証券会社で口座を開き、インターネット等で株式を購入するだけで、自動的に株主として扱われます。
ただし、デイトレードなど短期間での売買が可能になった昨今では、短い間だけ株を保有していても、本格的な株主として扱われません。
たとえば、配当を得るためには権利確定日をまたいで株を保有していなければならないほか、株主優待を得るためにも権利確定日をまたいで株を保有している必要があります。
権利確定日に株を保有することによって、はじめて株主名簿に名前が載ることになり、配当や株主優待の権利を確保できるのです。
未成年でも株主になることはできる
株主になるための条件として、年齢についてはとくに触れられていないため、極端な話ではありますが、0歳の子どもでも株主になれます。
ただし、未成年者が株を購入する場合は、親権者や未成年後見人の同意が必須なので、証券口座を開く際に同意書を用意するよう求められることがあります。
親の立場から見れば、子どもが勝手にお金を使ってデイトレードなどを始めることを実質的に防げるため、安全装置のようなシステムと考えるとよいでしょう。
まとめ
株主にはさまざまな種類がありますが、たとえ100株しか保有していない株主だとしても、平等に配当や株主優待、議決権の取得といった権利を受けることができます。
株主は会社に対してさまざまな要求を示すことができますが、一種の運命共同体のような関係性であるため、会社が倒産した場合には株主も責任を負うことになります。
株主になるためには、証券口座を持ち、株を購入するという簡単な手続きをするだけで十分です。
また、保護者の同意さえあれば、未成年でも株主になることは可能です。